特別支援教育の要点整理
1. 特別支援教育の目的と概要
(1)目的と定義
特別支援教育は、障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取り組みを支援するという視点に立ち、
一人ひとりの教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善・克服するために、適切な指導および必要な支援を行うものです。
特別支援教育の目指すものは「自立」と「社会参加」であり、2007年に学校教育法上に正式に位置づけられました。
(2)学びの場の連続性
インクルーシブ教育システムの理念のもと、障害のある子どもと障害のない子どもが、可能な限り共に学べるよう条件整備を進めるとともに、
一人ひとりの教育的ニーズに最も適切に応えるため、次のような連続性のある多様な学びの場が整備されています。
- 通常の学級
- 通級による指導
- 特別支援学級
- 特別支援学校
(3)児童生徒数の現状
直近10年間で、義務教育段階の児童生徒数全体は減少している一方、特別支援教育を受ける児童生徒数は倍増しています。
特に、
- 特別支援学級の在籍者数(約2.1倍)
- 通級による指導の利用者数(約2.3倍)
の増加が顕著です。
2. 学びの場の種類と対象
(1)特別支援学校
幼稚園、小学校、中学校、高等学校に準ずる教育とともに、障害による学習上・生活上の困難を克服し、自立を図るために必要な知識・技能を授けることを目的とする学校です。
主な対象
- 視覚障害
- 聴覚障害
- 知的障害
- 肢体不自由
- 病弱(身体虚弱を含む)
(2)特別支援学級
小・中学校などに設置され、障害のある児童生徒が、障害による学習上または生活上の困難を克服するために利用する学級です。
主な対象
- 知的障害
- 肢体不自由
- 病弱・身体虚弱
- 弱視
- 難聴
- 言語障害
- 自閉症・情緒障害 など
(3)通級による指導
通常の学級に在籍し、概ね通常の授業に参加できるものの、一部で特別な指導を必要とする児童生徒に対して、
障害の実態に応じた特別な指導を行う指導形態です。平成30年度からは高等学校でも制度化されています。
主な対象
- 言語障害
- 自閉症
- 情緒障害
- 弱視
- 難聴
- 学習障害(LD)
- 注意欠陥多動性障害(ADHD)
- 肢体不自由
- 病弱・身体虚弱 など
(4)通常の学級
個々の障害に配慮しつつ、通常の教育課程に基づいて指導を行う場です。
通級による指導の対象とならない幼児児童生徒に対して、必要な配慮のもとで指導が行われます。
登録後メッセージに「無料相談」とお送りください。
3. 教育課程と指導上の特例
(1)少人数学級編制
障害のある子どもに対し、少人数による適切な指導・支援を行うため、学級編制に特例が設けられています。
-
特別支援学校
-
小学部・中学部:1学級の標準は6人
-
高等部:1学級の標準は8人
-
複数の障害種を併せ持つ児童生徒で学級を編制する場合:基準は3人
-
-
特別支援学級
-
1学級の標準は8人
-
-
通級による指導
-
児童生徒13人につき教諭1人を配置
-
(2)教育課程の特例
- 特別支援学級
基本的には小・中学校の学習指導要領に基づき教育課程を編成しますが、特に必要がある場合は、
特別支援学校の学習指導要領を参考に特別の教育課程を編成することができます。 - 通級による指導
小・中学校の教育課程に加えて、またはその一部に替えて、特別の教育課程を編成することができます。
自立活動など特別な指導を行う際は、特別支援学校の学習指導要領を参考とします。 - 特別支援学校
小学校・中学校・高等学校に準ずる各教科に加え、障害による困難の改善・克服を目的とした「自立活動」の領域を含めて教育課程を編成します。 - 合科授業
必要に応じて、複数教科の内容を合わせて授業を行う「合科授業」を実施することができます。 - 訪問教育
障害のため通学が困難な児童生徒に対して教員を派遣し、実情に応じた授業時数で指導を行うことができます。 - 教科書使用の特例
検定教科書の使用が適当でない場合には、他の適切な教科用図書を使用することが認められています。
4. 発達障害の主な種類
- 学習障害(LD:Learning Disability)
全般的な知的発達に遅れはないものの、聞く・話す・読む・書く・計算する・推論する能力のうち、特定のものの習得や使用に著しい困難を示す状態。 - 注意欠陥多動性障害(ADHD:Attention Deficit Hyperactivity Disorder)
年齢や発達に比して不釣り合いな注意力の困難、衝動性、多動性を特徴とし、社会生活や学業に支障をきたす状態。 - 自閉スペクトラム症(ASD:Autism Spectrum Disorder)
かつて自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー症候群などと呼ばれていたものを含む概念であり、2013年のDSM-5以降、「自閉スペクトラム症」としてまとめて扱われています。
5. 交流および共同学習
交流および共同学習は、すべての学校の学習指導要領等において、
共に尊重し合いながら協働して生活していく態度を育成するために位置づけられています。
- 目的
障害のある幼児児童生徒との交流や共同学習の機会を設け、共に尊重し合い、協働して生活していく態度を育むこと。 - 意義
相互の触れ合いを通じて豊かな人間性を育てる「交流」の側面と、教科等のねらいの達成を目的とする「共同学習」の側面があります。 - 社会的意義
子どもたちの「心のバリアフリー」を育むとともに、保護者や地域社会の障害理解を促し、社会全体の意識変容にもつながります。
学校現場での活用
特別支援教育の知識は、教師がインクルーシブ教育の理念に基づき、すべての児童生徒の教育的ニーズに応えるための土台となります。
(1)教育的ニーズの把握
LD、ADHD、ASDなどの特性を理解し、日常の観察や教育相談を通して一人ひとりの教育的ニーズを的確に把握します。
(2)指導と支援の実施
- 特別支援学級や通級による指導の対象となる児童生徒に対して、担任や通級担当教員として、
自立活動を含む特別の教育課程を適切に実施します。 - 通常の学級に在籍する児童生徒にも、授業時間の工夫、合科授業、教材・宿題の配慮など、合理的配慮を行います。
(3)交流および共同学習の推進
交流および共同学習の機会を計画的に設け、障害のある子どもとない子どもが共に活動する中で、
互いを尊重し合い、協働して生活していく態度を育てます。
(4)チーム支援体制の構築
少人数学級編制や通級担当教員の配置基準を踏まえ、学校全体として支援体制を整えます。
他の教員、特別支援コーディネーター、関係機関と連携し、支援の質の向上に努めます。
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須合 啓(教採スクール 代表)
<経歴> 埼玉県公立高校教諭 12年 教採スクール運営 13年
<合格実績> 教員採用試験「65受験地」全員合格実績あり
<書籍>
「自分で考えて動ける子の育て方」(2022年10月/明日香出版)
「自分から進んで学ぶ賢い子の育て方」(2024年8月/明日香出版)
