特別支援教育と関連法規の要点整理
1. 学校教育法における特別支援教育
(1)特別支援学校の目的
特別支援学校は、視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者または病弱者(身体虚弱者を含む)に対して、
幼稚園・小学校・中学校・高等学校に準ずる教育を行うとともに、障害による学習上または生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識・技能を授けることを目的とします。
(2)特別支援学校の努力義務
特別支援学校は、自校の児童生徒への教育だけでなく、幼稚園・小学校・中学校などの要請に応じて、
障害のある児童生徒の教育に関して必要な助言や援助を行うよう努めるものとされています。
(3)特別支援学級の対象者(設置対象)
小学校・中学校などに特別支援学級を置くことができる対象者は、次のとおりです。
- 知的障害者
- 肢体不自由者
- 身体虚弱者
- 弱視者
- 難聴者
- その他、特別支援学級において教育を行うことが適当とされる障害のある者
(4)特別の指導(通級による指導)の対象者
特別支援学級に在籍しない、通常の学級に在籍する児童生徒のうち、障害の状態に応じた特別の指導を行う必要がある場合、
特別の教育課程によることができる対象者は次のとおりです。
- 言語障害者
- 自閉症者
- 情緒障害者
- 弱視者
- 難聴者
- 学習障害者(LD)
- 注意欠陥多動性障害者(ADHD)
- その他の障害のある者
【ポイント】
学習障害者(LD)と注意欠陥多動性障害者(ADHD)は、学校教育法第81条第2項に規定される「特別支援学級の対象者」には含まれていませんが、
学校教育法施行規則第140条における「特別の指導(通級指導)の対象者」として位置づけられています。
2. 障害者基本法
障害者基本法は、障害の有無にかかわらず、すべての国民が等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるという理念に基づき、
障害を理由とする差別の禁止や共生社会の実現を目指す基本法です。
教育に関する主な規定
- 国および地方公共団体は、障害者がその年齢・能力および特性に応じた十分な教育を受けられるようにするため、
可能な限り障害のある児童生徒が障害のない児童生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ、
教育内容や方法の改善・充実を図るなど必要な施策を講じなければならないとされています。 - 交流および共同学習を積極的に進めることによって、相互理解を促進しなければならないとされています。
- 障害のある児童生徒およびその保護者に対し、十分な情報提供を行い、可能な限りその意向を尊重することが求められています。
3. 障害者の権利に関する条約と合理的配慮
日本は、2014年(平成26年)に「障害者の権利に関する条約」を批准しました。
この条約は、インクルーシブ教育システムの理念の国際的な基盤となるものです。
(1)合理的配慮の定義
「合理的配慮」とは、障害者が他の者との平等を基礎として、すべての人権および基本的自由を享有し、または行使することを確保するために必要かつ適当な変更・調整であって、
特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失したまたは過度の負担を課さないものとされています。
(2)教育に関する規定(第24条)
締約国は、次のような義務を負います。
- 障害者を包容するすべての段階の教育制度および生涯学習を確保すること。
- 障害を理由として、障害者が一般の教育制度から排除されないことを確保すること。
- 個々の障害者に必要な合理的配慮が提供されることを確保すること。
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4. 障害者差別解消法
「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」は、
国連の「障害者の権利に関する条約」の締結に向けた国内法整備の一環として制定されました。
(1)差別の禁止
行政機関などは、障害を理由とする不当な差別的取扱いをしてはならないとされています。
(2)合理的配慮の提供
- 障害者から社会的障壁の除去を必要としている旨の意思表明があった場合、
その実施に伴う負担が過重でないときは、必要かつ合理的な配慮を行わなければなりません。 - 行政機関等に課されていた合理的配慮の提供義務は、令和3年(2021年)の改正により、事業者にも義務として拡大されました。
5. 発達障害者支援法
発達障害者支援法は、自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害などの発達障害をもつ者に対する支援を目的とした法律です。
教育に関する主な規定
- 国および地方公共団体は、発達障害のある児童生徒が、その年齢・能力および特性に応じた十分な教育を受けられるようにするため、
できる限り発達障害のない児童生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ、適切な教育的支援を行うこととされています。 - 個別の教育支援計画および個別の指導計画の作成を推進し、
いじめの防止等の対策や支援体制の整備を図ることが求められています。
学校現場での活用
これらの特別支援教育に関する法規の知識は、教師がインクルーシブ教育の理念と法的義務に基づき、
すべての児童生徒の教育的ニーズに対応するための重要な判断基準となります。
1. 合理的配慮の実践
障害者差別解消法に基づき、合理的配慮の提供が必要であることを理解し、
授業や学校生活において、障害のある児童生徒から意思表明があった場合には、過重な負担とならない範囲で個別のニーズに応じた指導や環境調整を行います。
例:座席の配置、教材や課題の工夫、試験時間の延長、掲示物や板書の配慮など。
2. 通級指導の対象理解
LDやADHDは特別支援学級の対象ではなく、通級による特別の指導の対象であることを正確に理解し、
通常の学級の担任として、通級指導教室の担当教員と連携しながら適切な支援を行います。
3. チーム支援体制と計画作成
発達障害者支援法に基づき、発達障害のある児童生徒に対して、
個別の教育支援計画や個別の指導計画を作成・推進する際に、学校内外の専門家と連携する法的根拠として活用されます。
4. 交流および共同学習の推進
障害者基本法の規定を踏まえ、障害のある児童生徒とない児童生徒の相互理解を促進するために、
交流および共同学習の場を積極的に計画・実施します。
これにより、子どもたちの「心のバリアフリー」を育み、共生社会を担う態度の育成につなげます。
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須合 啓(教採スクール 代表)
<経歴> 埼玉県公立高校教諭 12年 教採スクール運営 13年
<合格実績> 教員採用試験「65受験地」全員合格実績あり
<書籍>
「自分で考えて動ける子の育て方」(2022年10月/明日香出版)
「自分から進んで学ぶ賢い子の育て方」(2024年8月/明日香出版)
