[場面指導]
Eさんは、現在小学校5年生です。4年生の3学期に父親の仕事の関係で転校してきて以来、学校では声を出したことがありません。何事にも消極的で、表情も乏しいのですが、4年生から同じクラスだった2、3人の友達とはうなずく程度のコミュニケーションはできています。Eさんは選択性かん黙の子供と考えられますが、どのような指導をしたらよいでしょうか。
学習コーチより
(1) 選択性かん黙の背景要因の理解選択性かん黙とは、言語能力はあるのに、学校などの特定の場面や特定の人に対して、話すことができない状態を言います。家庭ではよく話すことが多いので、保護者が気付かない場合もあります。選択性かん黙に共通する要因として、家庭外での対人的緊張と不安が強いことがあげられます。したがって、Eさんへの対応としては、話そうとしても話せないという緊張や不安、恐怖心を取り除くようにすることが重要となります。話ができるようになることを急ぐあまり話すことを強要したり、話さないことを理由に叱ったりするなど強引に言語表現を促すことは逆効果です。むしろ、根底にある不安を理解してあげることが大切となります。
(2) 温かく受け入れられる集団編成の工夫
例えば、班の構成メンバーについては、親切で物事にこだわらず、いつも明るい児童や同じクラブに属している児童などと同じグループにするなどがよいでしょう。ただし、担任は班の児童にあまり負担のかからないような配慮をする必要があります。また、具体的な対応については、発達障害・情緒障害通級指導教室担当者など専門的な知識を有する者に相談することが大切です。
(3) 心を開き、対人関係での緊張を和らげる手立て
担任は、さりげなくEさんが心を開いてくるような手立てを考えることが大切です。Eさんと接する時間を作り、少しずつかかわりを多くするようにし、担任と一緒にする仕事をつくり、その仕事を通して心を開かせるように努めます。言葉は出さなくても児童生徒は話をよく聴いています。Eさんのよい面や得意な分野に気を配りながら話をすることも大切です。
(4) 自信をもたせ、自己表現できるような場面づくり
絵画や造形など言語に依存しない学習活動を活用することも大切です。例えば、図画工作で作った作品のよいところを褒め、保護者から感想を求めるなどもその一つです。その他、Eさんのよい面を認めるように心掛け、Eさんが意欲的、主体的に活動するような場面を自然な形でつくることが大切です。