新学習指導要領 改訂のポイントと前文
小・中学校の学習指導要領改訂案が、2月14日に公表されました。
総則では、「チーム学校」をもとに学校と社会の連携・協働の実現を図る「社会に開かれた教育課程」を重視しています。その中で大きな教育目的の転換が図られています。それは次期指導要領では、「生きる力」を育むために児童生徒がこれまで「何を学ぶか」という点から、「何ができるようなるか」という教育の目的の明確化と、そのために「何を学び」手段・方法として「どのように学ぶか」を意識しながら、教育内容を編成するカリキュラム・マネジメントを実施するよう求めています。
また、現在日本や世界が抱えている諸問題に対応できる力を育成するために、言語能力の充実や情報収集・情報編集などの情報活用能力と問題発見力、問題解決能力などの資質・能力を育成することに力を入れています。
なお、新たに学習指導要領には前文を設けることで、学習指導要領改訂全体の方向性を示していることポイントになっています。よって教採試験でもこの前文が出題されることになりますので、しっかりと対策を練っていきましょう。
改訂ポイント
■前文
【総則】
・教育基本法の理念や教育課程の役割など、「社会に開かれた教育課程」を実現していくにあたり、考え方を前文として新設
・組織的・計画的に質的向上が図られるよう、カリキュラム・マネジメントの流れに沿った章立てに改善
・学校等段階間や教科等間のつながりを見通した教育課程編成について明記。障害のある子供への指導も含め、1人1人の発達を支援する指導の充実など明記
・言語能力、情報活用能力、問題発見・解決能力等の学習の基盤となる資質・能力や、現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力(主権者として求められる力や、健康・安全・食に関する力など)の育成を図る教育課程編成について明記
・各教科等の特質に応じ、言語活動や体験活動、ICT 等を活用した学習活動等の充実を図るのを明記。小学校でのプログラミング教育についても明記
・障害のある子供や海外から帰国した子供、日本語の習得に困難のある子供、不登校の子供など、特別な配慮を必要とする子供への指導と教育課程の関係について明記
・教育課程の実施に当たり、家庭や地域と連携・協働していくのを明記
【国語】
・語感を磨き語彙を豊かにする指導を改善・充実
・引用の仕方や出典の示し方、情報の信頼性の確かめ方など、情報の扱い方に関する事項を新設
・学年別漢字配当表に、都道府県名に用いる漢字(20字)を追加(小4)※小4から授業時数が増加。
・全領域に「考えの形成」または「考えの深化」の項目を位置付け
【社会】
・歴史的分野を130から135単位時間、地理的分野を120から115単位時間に時数変更(中)
・主権者教育等の改善・充実
○防災教育や海洋、国土教育の改善・充実(竹島、尖閣諸島を「我が国固有の領土」として初めて明記)
・「鎖国」を「幕府の対外政策」とするなど、歴史的事象の表記を学術研究の進展に対応して整理
・専門家や関係諸機関等との連携を重視
【算数・数学】
・日常生活、社会や数学の事象から問題を見いだし、主体的に取り組む数学的活動を充実
・小・中学校を通じ、統計的な内容を充実
・現行は中1で扱う代表値(平均値・最頻値・中央値)を小6に移行する
・4年生で数量の関係同士を比較する方法として、簡単な割合を用いた比較の仕方を新たに扱う(小)
・2年生の図形学習で「反例」を用語として新設。事柄が正しくないのを示す方法として扱う(中)
【理科】
・知的好奇心や探究心を持ち、自然に親しみ、見通しを持って観察、実験などを行い、その結果を整理し、考察するなど、科学的に探究する学習活動を充実
・理科を学ぶ意義と有用性の実感や関心を高める観点から、日常生活や社会との関連を重視
・5、6年生に加え、4年生でも自然災害に関する内容を扱う(小)
・全学年で自然災害に関する内容を扱う(中)
【外国語活動・外国語科】
・学校段階間の学びを接続するため、国際基準を参考に、小・中・高校一貫した5領域(聞く、読む、話すこと/やりとり、話すこと/発表、書く)別の目標を設定
・中学年から聞く、話すを中心にした外国語活動を導入。高学年から段階的に、文字や定型文を読む、書くを加え、教科として「外国語科」を位置付け、指導の系統性を確保。3~6年生で年間35単位時間ずつ増(小)
・互いの考えや気持ちなどを外国語で伝え合う、対話的な言語活動を重視。扱う語彙数を1600~1800程度に改訂。授業は外国語で行うのを基本にすると新たに規定(中)
【特別の教科 道徳】(平成27年3月に先行して改訂済み)
・いじめ問題への対応の充実や、発達の段階を一層踏まえた体系的な内容に改善
・検定教科書を導入
・問題解決的な学習や体験学習などを取り入れる
・数値による評価や他者との比較は行わず、個人内評価で記述
・調査書(内申書)への記載や入試での活用は行わない
【生活】
・内容項目を大きく3つに整理。体験的な学習で育成する資質・能力(特に思考力・判断力・表現力等)が具体的になるよう見直す
・試行、予測、工夫などを通して新たな気付きを生み出すことや、伝え合い表現する学習活動で学びを振り返り、気付きの質を高める
【音楽】
・和楽器を含む、我が国や郷土の音楽の学習を充実(小)
・和楽器を中学年の旋律楽器の例示に追加(小)
・生活や社会での音楽の意味や役割について考える学習を充実(中)
【図画工作・美術】
・造形や美術の働き、美術文化への理解を深める学習を充実
・形や色などの造形的な視点で捉えることを、育成を目指す知識として明確に位置付け
【家庭、技術・家庭】
・家庭分野では少子高齢社会などの社会変化や持続可能な社会の構築に対応し、家族や家庭生活、幼児、高齢者、食育、日本の生活文化、金銭管理、消費生活や環境に配慮した生活などに関する内容や学習活動を充実
・技術分野では情報技術の高度化に対応し、プログラミングや情報セキュリティーについて充実。知的財産を創造、保護、活用する態度や技術に関わる倫理観の育成を重視
・小学校家庭科では、実践的な活動に取り組む「家族、家庭生活についての課題と実践」を新設
【体育・保健体育】
・体力や技能の程度、年齢や性別、障害の有無にかかわらず、運動やスポーツの多様な楽しみ方が共有できるよう配慮
・投能力の低下傾向に対応した指導(小)や、オリパラ指導としてスポーツやパラリンピックの意義や価値を学ぶ内容(小中)
【総合的な学習の時間】
・各学校の教育目標を踏まえた目標を設定
・実生活・実社会の中で活用できるものを重視
・プログラミングを体験しながら論理的思考力を身につける学習活動は、探究的な学習の過程に位置付ける
【特別活動】
・人間関係形成、社会参画、自己実現の3視点を踏まえ、目標と内容を整理。各活動や学校行事で育成する資質・能力を明確化
・小・中学校を通じて、学級の課題を見いだし解決に向けて話し合う活動を重視。学校教育全体で行うキャリア教育の中核的な役割を果たすのを明確化。小学校の学級活動内容に「キャリア形成と自己実現」を新設
・各活動や学校行事を通して、自治的能力や主権者として積極的に社会参画する力を重視し、多様な他者との交流や協働、安全、防災などの視点を重視
現行学習指導要領と新学習指導要領の対比
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